2018-01-01から1年間の記事一覧

やぶれかぶれ

もう縦も横も右も左もわからないけど今すごく幸せだなと感じていた。 「ビールあげる。」 私の寝ている斜め右上辺りからさやかの声がする。 「うん。」 ビールを受け取るために体を起こす。 「なんかさ、星って綺麗なんだよね、多分。」 そんなさやかの声に…

まいり

大きい湖のある街で生まれ育った。 休日になると湖に住む白鳥や黒鳥、鯉に餌をあげたりスワンボートに乗りに来る家族連れで賑わうような商業用の湖だ。 私たち地元の人間はなぜだかその湖にとても愛着を持っていて小学生の時は家族と、中学生になると友達と…

散る

そして目を背けていた現実 あなたにとって私は 毎年新しくて綺麗な花を咲かせる桜のようなものだったんだと 咲いたばかりの花は言うまでもなく美しいし、 その花びらが宙を舞う様にも風情がある けれど地面にへばりついて茶色くなったそれは もはや桜とは呼…

序章

「おいで。」 そういって手を差し伸べてくれた彼は どこか気だるそうで、 少し俯いてあくびを噛み殺していた。 血管が蒼く浮き出るほど白くて細い彼の手は 今にも消えてしまいそうなほど儚かったから、 消えて無くなっちゃわないうちに急いでつかまえる。 優…